【創作物語】三つの名前を持った猫 その3

私は、幸せだった。
 病院には、いろいろな病気の犬や猫がやってきた。
 誰もが皆、忙しそうにキビキビ動いていた。
 私は、邪魔にならない場所で過ごした。
 昼休みや、休憩時間になると、誰かの膝の上に乗って、体をなぜてもらい、ゴロゴロと嬉しいと言うサインを出した。
 人間も私も満足する方法は、母から教わったものだ。
 夜になると、病院は無人になる。
 みんなは、口々に言う。
「ダニヘル、また明日ね、元気でね」と。
 淋しがりやの私は、入院している犬や猫と話すのが、夜の日課になった。
 彼らと話していて思うのは、ここに入院している子たちは、皆一様に暖かい家庭があって愛され、大切にされているんだということだ。
 病院に居る間に、ダニ駆除はもちろんのこと、ヘルニアも治り、おまけにありがたくない不妊手術まで施された。
 あっという間に三ヶ月が過ぎた。
 ある夜、持ち運びできるハウスに入れられ中田先生の車に乗せられた。
(何処へ連れていかれるのだろう、また捨てられたらどうしよう)不安でいっぱいになった。
 ルリ子さんや病院のみんなにお別れもしていないのに。
(また捨てられるのかしら?)疑心暗鬼の私は、嫌だ嫌だと激しく抵抗し、ハウスをガリガリとひっかいたり、ドアに体当たりしたりしたが、鍵がかかっているのか、ビクともしない。
 激しく抵抗したので疲れがどうっと押し寄せた。
(もうどうなってもいいや)運を天にまかせようと思いなおし、おとなしく車に揺られることにした。
 しばらくして、車が止まった。
 中から男の子が、飛び出してきた。
「お父さん、お帰り、猫連れて帰ったの?」
「あぁ、連れてかえったよ」
 男の子は、ハウスを受け取り覗きこんだ。
 怯えている私と目があった。
「かわいい、何て名前」
「ダニヘルと呼んでいたのだけど、コウがいい名前を付けてやって」
 家の中に入れられ、ハウスから出されて、やっと自由になった。
(私は、ここで飼ってもらえるらしい)とホッと一安心して、周りを見渡して、びっくり仰天した。
 ものすごくでかい犬が二匹、興味津々で、じっと私を見つめているではないか。
 おまけに少しずつゆっくりとちか寄ってくるではないか。
(わー、どうしよう)心臓がバクバクしてすこしずつ後ずさりした。

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