【創作物語】三つの名前を持った猫 その5

ふといい方法が浮かんだ。
 オマやアルは、食後必ずトイレの為に外に出る。その時がチャンスだ。
 あまり犬の近くに居ると、家の人は先に私を抱き上げてから、窓を開けるのでダメ。
 どこかに隠れていてすばやく走り出るのだ。
 そう、その方法しかない!(ヨーシ、頑張るぞ)闘志に燃えてチャンスを伺う。
 それから二日後、ついに外に出ることに成功した。外の空気のおいしいこと。
 嬉しくってベランダの柵の上を歩いてみたり、モチの木によじ登ったりした。
「マル子、あまり遠くまでいくな」
 アルが用を足しながら話かける。
 オマは、身軽な私に関心したように、ただポカンと半分口を開けて眺めている。
 そうだ、昔、母さんが教えてくれたっけ、、『人間は、習慣性の強い動物だから、よく観察して、上手に付き合う方法を学ぶんだよ』
と。
 毎日、気持ちよく外に出してもらうには、外に出ても、必ず暗くなる前には帰る、ということを実行した。
 母さんの言ったとおり、窓際でニャーと鳴くと誰かが開けてくれた。
 私の母さんは、人間の習性をよく観察していて、何てえらいのだろうと改めて感心した。
 今朝もいいお天気だ。
 朝飯を食べて、すぐ外に出た。友達もいっぱい出来て、じゃれあったリ、陽だまりで、昼寝したりして楽しくすごした。
 夕方になって、ペコペコのお腹をかかえて帰宅し、外からニャー(開けて)と声をかけると誰かが開けてくれる。
 夕食を食べると、犬舎に入って、アルとオマに、その日の出来事を話して聞かせた。
 彼らは、面白がって私の話を楽しんで聞いていた。
「マル子はいいね、自由があって。私たちは、外に出るときは、必ず鎖につながれていて自分で自由に歩くことだって出来ないんだ」
 オマがうらやましそうに言う。
 家人も、朝出て夕方には必ず帰るというパターンにすっかり安心したのか、窓際でニャーと言うと、すぐ開けて出してくれるようになった。
 ある日の夕方、家路へと急いでいると、見知らぬ猫に会った。
「おい、おまえ、もう帰るのかい」
「帰らないと、家の人が心配するからね。もうすぐ暗くなるし」
「ちょっとだけついてこないかい。すぐだからさ。いい所へ連れて行ってやるよ」
 暗くなるには、もう少し時間があるからと思い、誘われるままついていった。
「走るからしっかりついてこいよ」
 そう言うと、その猫は全速力ではしりだした。

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