【創作物語】三つの名前を持った猫 その8

次の日の土曜日、また魚の干物を、ゲットしようと、ノラと共に公園まで来たとき、一羽のカラスが、声をかけてきた。
「おい君、君はマル子ていうんじゃないかい 
「ええ、私マル子だけど、どうして私の名前
知っているの」
「あちこちに、迷子の猫を捜す写真が貼ってあるよ。君とそっくりだったからさ。それに夕方になると、二人の男の子がマル子、マル子って呼びながら、あっちこっち歩いているよ」
 それを聞いたとき、私の胸は、キュキューンと締め付けられるようになった。
 私のことを心配してくれているユウ君、コウ君はじめ家族みんなの顔が浮かんできた。
「カラスさん、教えてくれてありがとう。私すぐ帰るわ」 
「そうしな、あまり心配かけるなよ」
 そういうと飛んでいってしまった。
「ノラ、聞いたでしょう。私、帰らなくては今まで、楽しい時間をありがとう」
「そうしな、俺も、楽しかったよ、ありがとうな」
 そういうとノラは、すごいスピードで駆けていった。
 ノラの目は、うるんでいた。
 私には、帰る家があって、いつでも暖かく迎え入れてくれるファミリーがいることを当たり前に思い、帰らず遊び暮らして心配をかけてしまったことを悔やんだ。
 家に着いて、いつものようにベランダからニャー(開けて)と声をかけると、すぐ気づいたオマが、ワンワンと、家の人に知らせ、ユウ君が開けてくれた。
「マル子、おかえり、長いこと何処へいってたの、心配していたんだよ」
 そう言いながら、抱き上げてくれた。
「母さん、マル子が帰ってきたよ」
 二階に向かって、大声を出すと、二階から 
バタバタとコウ君と父さん母さんが、離れからはお爺さん、お婆さんが急いで駆け寄ってきた。
 みんなは、口々に私の無事を喜んでくれてかわるがわる抱いてくれた。
 みんなの肌のぬくもりが、心地よかった。
 緊張がほぐれた私は、しばらくは、何処にも出かけずに、まったりと時を過ごした。
 アルとオマは、私の十日間の出来事を聞きたがった。
 私は、ノラとずーと一緒だったこと、小川さんや岸さんが食事を与えてくれたこと、岸さん家のガレージの物置が寝ぐらだったことなどを話して、聞かせた。
 とりわけ、若いオマは、猫には、そんな自由があって羨ましいといった。
 しばらくして、またいつものパターンに戻って、朝出て、夕刻には、きちんと帰る生活を続けた。
 そんなある日の夕刻、帰ろう、と歩いていると、ポッ、ポッと雨が降ってきたかとおもうと急に、激しい降りになってきた。
 あわてて走り出したとたん、猛スピードで走ってきた、自転車にぶっかりはね飛ばされてしまった。
「わぁぁ、猫ちゃん、ごめんよ」
 そういいながら、自転車の学生は、止まろうともせず、そのまま、どしゃ降りの中を、走り去った。
 私は、どうにか雨をさけて、近くの家の軒下に移動したまではよかったが、そのまま気を失ってしまつた。

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